Essai 2011年10月


246.あ、秋。

(10月3日更新)

 今月こそは月の初めのうちから少し更新しておく事にする。とか言っている間に今年も今月を含め余す所3ヶ月だ。結局レストランは月火及び土曜が休みで早い話水木金と日曜のブランチしか営業しないと言う完全にオフシーズンモードになってしまった。そんな訳でブランチのミザーンプラスは土曜1日で済ます事(幾ら営業していなくても1人で1日で用意するとなると相当きつい)になり、また10月から私のメニューからジョルジュのメニューに変わったりと諸般の事情から、先週は(ブランチの準備と本番は除いて)ずっと宴会の方を手伝っていた。今日の月曜と明日の火曜は連休だ。しかしここ数日気温が上がったり下がったりが激しく今週から本格的に紅葉が始まる事になりそうだ。一週間後は感謝祭、例年この頃が紅葉のピークだが、今年はやや遅めか。
 ゆっくり休めるので、オープン仕立ての頃行って以来2年ぶりに(2009年11月)アジア系スーパーマーケットのT&Tに行った。大きな店だが、そこでしか手に入らないと言うものがある訳でも無く、何より遠いので(オタワ空港に近い)どうしても疎遠になってしまう。
 しかし、神林シェフのオタワ ハントクラブ(エッセイ3月参照)が目と鼻の先なので、スーパーに行く前にちょっと挨拶にと寄ったら、歓迎して下さり、ちょっとどころか2〜3時間もお邪魔してしまった。まあ神林シェフはようやく新しいスーシェフを片腕に持ったとは言え、相変わらずシーズン中殆ど無休な様だから、ついでに少し休憩くらいの気持ちでいて下さると良いのだが。何れにせよ、大先輩の話を聞くのはいつも私にとっては大変参考になる。


247. 結局紅葉の頃はばたばたして。

(10月16日更新)

 先々週は月火と連休をとってのんびりしたと書いたが、その翌日からは毎日夜まで仕事で、先週は月曜休んで火曜からやはり毎日朝から晩までの勤務。唯一日曜の今日はブランチのみだが、かなり遅くまでお客様がいらしたし、1人で後片付けをしたので夕方まではかかった。今週は水曜、木曜の2日間、毎年恒例の(つまり何故か毎年文明博物館で行われる)コンパスグループの全国大会。朝食、昼食、軽食、夕食と丸1日食べ続ける感じで、どちらの日も長い1日になる。当然明日の月曜は朝から夜遅くまで仕込みに追われる事になるし、火曜水曜は早朝からこれまた夜遅くまでの仕事となるだろう。レストランが暇になったら、ちゃんと更に忙しい仕事が別に待っているという訳だ。木曜は今の所何も入っていないので1日休めるかなとは思っているが。
 今日のブランチはしかし久しぶりに暇だった。紅葉の季節だからだろうか、何と日本人のお客様のテーブルが3つもあった。1つでも滅多に無い事なのに。少なくとも1組、おそらく2組は紅葉を目当てに観光に来られた方々の様だった。日本語が通じると喜んでくださるが、こちらも同胞のお客様と日本語で話せるのは嬉しい。先々週神林シェフに会いに行って、先週のブランチも別な日本人のお客様が1組。3週連続で日本語を話す機会があるなど凡そ珍しい。
 

248. 首都の歴史に身を置いてきて。 

(10月31日更新)

 相変わらず朝・・それも多くは早朝出勤して夜帰ってくるというパターンが多く少なくとも週の半ばから週末に掛けては毎日宴会スケジュールが埋っている。例年ならぐっと宴会が減るこの時季なのに、本当に世の中不景気なのかと訝る程の忙しさだ。勿論有り難い事ではあるのだが。結局今年は紅葉見物に出かける間もないうちに明日はもう11月だ。商店などは早くもクリスマスの飾りつけやプレゼントを店先に並べ始めた。クリスマスソングを流している所すらある。
 気温もすっかり零下に突入する事が多くなった。マイナス5〜7度くらいには下がる。この程度の気温は東部カナダでは十分秋の範疇だが、しかし今日明日にも雪が降ってきておかしくない空模様ではある。
 すっかり宴会部門に戻ったきりになってしまったが、先週からヒューゴがようやく職場復帰したからレストランは心配ないし、そもそも近日中にレストラン「カフェ・ド・ミュゼ」は閉店する事が決まっている。建物の反対側に建設中だった新しいビストロが完成し、そのオープンと共にレストランは役目を終えると言うわけだ。ビストロと言ってもカフェテリアよりはましなものを出す筈だが、少なくとも首都圏の美術館、博物館の中でレストランを併設していたのは私の知る限りここぐらいだったから残念な気がする。何よりもガラス張りの壁から世界遺産の運河を含む美しいオタワ川を挟んで国会議事堂が目の前に迫ってくるレストランからの眺めは最高だっただけに、この先ここを訪れる観光客の方々にも是非1度は観ていただきたかった。 
 まあしかし私にしてみれば、そんなレストランが閉店する前に料理長を務め、自分のメニューを提供で来た事は良い思い出になるだろう。実際この博物館の向いにあった創業80数年の老舗フランス料理店やウエイクフィールドの築170年程のホテル、その2つの町を数時間かけてゆっくり走る蒸気機関車で提供されるコース料理・・そしてこのカナダ最大級にして国の顔の1つとも言える博物館とカナダ首都圏の歴史の一部に外国人である自分が深く関わってきた事は何だか不思議な気がする。
 日本に居れば私などが料理を作る事など考えられなかった数カ国の大統領や王族、ハリウッドなどのスターなどに食を提供してこれたのも小さくともオタワ・ガティノーがカナダの首都であればこそだ。