- 27.新年
- (1月7日更新)
- ホリデーシーズンを楽しみにしているお客さん達には大変申し訳ないが、正直ようやくクリスマスと正月の騒ぎが終わってくれたか・・・というのが本音だ。1月と3月は1年でも一番暇な期間だ。1月はホリデーの直後で皆贅沢を控える。2月はバレンタインデーなどのいくつかのイベントでちょっと盛り上がりをみせる。3月はカナダではMarch
breakと呼ばれ、いっせいに休暇を取り、大抵暖かい場所へ向かう。我々の業界でさえ皆休みを取ろうとする時期だ。そういう訳で私は3月は外して1月に毎年休暇を取るようにしている。1年に1度の長期休暇だ。去年この休みから帰ったら当時働いていた店が無くなっていたという前代未聞の珍事はこのエッセイの第一回で詳しく述べたとおりだが、エッセイ1あれからもう1年が過ぎた訳だ。そのエッセイで述べた車もどんどんぼろくはなったが未だ現役だ。もっともチェルシーからウエイクフィールドへの道のりは除雪も間に合わない凄い田舎道で、タクシーなどでも乗る前に行く先を告げると乗車拒否されたこともあるような地域。4WDのジープタイプとは言え、オールシーズンタイヤでさえ滑るので今週中にスノータイヤに換える事にした。休暇で日本に帰ろうと言う時にまた大きな出費だが、ここを生活拠点にする者にとっては必要経費と言わざるを得ない。そう。15日から2週間足らずだが日本に帰ることになっている。日常に戻ったので基本的にシェフは土、日休みというシフトに戻ったが、金曜日に年末年始の無理がたたって風邪をひいたようだ。しかし「昨日からなんだ。でもいつも3日で治るから、土、日休んだら治るよ。来週は私が頑張って君に3日休み取ってもらうよ」とか言って予定表を作ってきた。「シェフ。その次の週から私の休暇が始まりますから、来週はそんなことしていられないと思いますが・・・」「何が始まるんだって?」「いえ、何がって、ですから私のヴァカンスが・・・」「ええ!そうだったけ?それ聞いたら熱が上がってきた」「ははは。」「冗談で言ってるんじゃないよ。本当に熱が上がってきた」見ると確かに赤い顔が更に赤くなっている様子。「そうか。そういう事なら悪いけど確かに君に段取りを付けておいて貰わなければならない事が山ほどあるな。週明けの月曜日1日だけ休んでもらって後は出発の前日の夜まで仕事してもらわざるを得ない。まったく誰だ。Nakiの休暇願いにサインしたのは(あんたや)・・・ああ、本当に頭が痛い。とにかくきょうはこれで帰って明日、あさってとゆっくり休ませて貰うよ。」との事。今の状況では私が休めばシェフは休みなしになるから申し訳ないが、航空券の手配は済んでいるし、この時期を逃すと尚更休みが取り辛いのだ。そもそもシェフは去年2度も長期休暇を取ったし(2度目は私が副料理長になったばかりで苦労したと言う話はエッセイ8で欠いたとおり。ここは勘弁していただこう。副料理長なんて肩書きだけ聞くと偉そうだが、実態はうだつの上がらない中間管理職の中年親父に過ぎない。1年に1度くらい休みたいのだ。流石にシェフより大変な仕事だとは言わないが。今回のエッセイの何処が「新年」と言うタイトルに関係するのか、書いている自分でもよく分からなくなってきたが、まあ新年第一回のエッセイと言う事で。因みに大晦日は朝の6時から働いていたので、片付けは部下に任せ、帰りの車の中でラジオのカウントダウンを聞きながら年を越した。雪が降っていたので花火が上がる事も無く。
- 28.暖冬
- (1月11日更新)
- 流石にここ数日で気温が下がってきたが、それでも寒くてマイナス15度程度。十分寒いじゃないかと言う方もいらっしゃるだろうが、ケベック州内では最南端に位置するこのウタウエ地方でも寒い時はマイナス40度くらいにはなるのだ。今が正にその時季。1年で最も寒いはずであるから寒くてマイナス15度、日中プラスの気温に転ずる事も多いと言うのは驚くべき暖冬と言わざるを得ない。雪の代わりによく雨も降る。こんな事はケベック州に移住して11年、初めての経験である。ここがケベック州最南端と書いたが、ケベック州の南北の距離は約2000キロメートル(東西は同1500キロメートル)、北部は北極海に接している。かなり北の方に親戚がいるという部下の話によると、春と勘違いして熊が冬眠から起きてきて餌が無いので穴倉にすごすご戻っていったり、氷が解けて未だ泳ぎを知らないアザラシの赤ん坊が溺れたり、果ては泳ぎの得意な北極熊でさえ文字通り取り付く島が無い為最後には力尽きて溺れたりと言う大変な事になっているらしい。生態系が滅茶苦茶な事になるとてきめんに食材の流通にも影響してくる。地球温暖化はもう脅威を感じるレベルに達し始めているようだ。
Harb
徒然なるままに
essai2007年1月