エッセイ2008年9月



96.食の安全の話。
(9月7日更新)
9月は早々に更新するとか書いたが、あっという間にまる1週間経っている。8月の終わりはシーズンの終わり。周りのレストランは例年通り軒並み静まり返った。しかし、有難い事ではあるが、Le Moulin Wakefieldは相変わらず減速する様子が無い。9月1日の労働者の日などはLes Fougèresではスタッフパーティをやっていると言うのに昼間の2時間だけでも100人を越すお客様で、しかも一切ブッフェはやらず、全てア・ラ・カルトで出した為に目まぐるしい忙しさであった。結局これからは企業会員のお客様はいかに少数のグループでもブッフェを、逆にその他のお客様には全てア・ラ・カルトで対応する事になったのだ。部下達もほぼ全員週休は辛うじて1日、それでもミ−ザンプラス(仕込み、準備)が間に合わない状況である。皆カナダ人としては相当長時間、しかも中身の濃い仕事をしている筈だ。つまり2日以後も十二分に予約が入っていると言う事でもある。寧ろ夜のお客様はかなり減ったが、昼は来週以後も相当忙しい。企業会員のお客様が中心になって行く訳だが、引きずられるように一般のお客様も入ってくる。夏休みは終わり、夜の宿泊は減ったりしているのだから、地元のお客様がかなり来てくれる様になった様だ。メニューに入れた当初はまるで注文の無かった例の「牛の燻製八幡巻き」も最近急に注文が増えた。パディは「おそらく何かの雑誌か、新聞に記事でも載ったんじゃないか」と言うが、確かに急に人気が出る時はそういう裏話がある可能性はある。結構フード・ライターなどマスコミ関係者もお客様としていらっしゃるし、あるいは当オーベルジュのメニューとは無関係に「日本の八幡巻き」の話題が記事になったのかもしれない。そこで私がサービスの人達に頼んで、お客様に宣伝してもらっている牛蒡の効能(新陳代謝を良くする等)でも書いてあれば、皆注文しだしたりする事も十分あり得ると言う訳だ。マスコミの力は恐ろしい。そんな風にプラスに作用してくれる分には有り難いが、マイナスな記事でも何処かに載れば一気に客足は途絶える。今カナダは死者だけで15人を越えると言うメープル・リーフ社のリステリア菌問題で揺れているが、ここ数年だけで、トマトが危ない、ほうれん草が危ない、牛だ、鶏だ、魚だと次々に報道され、その度に注文内容に影響が出て対策に追われた。お客様にしても何を食べたら良いのか不安でしょうがないのではないかと思うが、今回のリステリア問題などは被害者の数が多いので相当深刻だ。リステリア菌と言うのは無味無臭である所がやっかいだ。一応加熱すれば殺菌できる筈だがその加工食品が既に汚染されていれば増殖するのみ。他にも菌の中には米などに含まれるセレウス菌の様に加熱しても死なない耐熱性菌と言うものさえあるから、加熱すれば大丈夫とか、臭いをかげば安心などと思っていると危険である。こんな事をうっかり書くと「次に危ないのは米か?」などと取り上げられるかもしれないから注意した方が良いかも知れない。リステリア菌にせよ、セレウス菌にせよ、人間少々の菌で食中毒を発症させる程ヤワにはできていないと言う。ただし、病気の人、妊娠中の女性、高齢者、子供などは耐性が弱いし、今回のリステリア菌の犠牲者もそういう人達が中心だった。菌をゼロにするのはほぼ不可能。危険なレベルまで増殖させない工夫が我々に課せられた仕事の一つではある。脅かす訳では無いが、そもそも肉や魚は細菌のかたまりと言っても過言では無い。豚や鶏にサルモネラ菌が多い事は昔から知られ、故によく火を通す事がずっと行なわれてきたが、最近の豚には餌の工夫でロゼ(ミディアム・レアくらい)に焼いても食べられるようなものも出てきたし、お客様もそれを希望される事もあるので一概には言えない。一方で牛などはかつて0.数パーセントしか0157を持っていなかったのが、今や一説によると40パーセントが持っていると言われ、病原性大腸菌やサルモネラ菌も牛に含まれている。魚で危険なのは腸炎ビブリオ辺りか。菌を増殖させない、持ち込まない、殺菌するの3原則を守りながら、一番おいしい最適な火入れを追及しようというのは非常に難しい事ではある。しかし、家庭では簡単に出来ないそういう事を専門家としてやってくれる事を期待するからお客様は高いお金を払って食べに来てくれるのだから、一層の努力が必要だという事だろう。
今回は例の大使館主催の日本食普及促進レセプションの話を書くはずが、違った方向に行ってしまった。しかし大事な話だから止むを得まい。次回こそ(出来れば、明日かあさってでも)そっちの話を書くことにしたい。

97.日本食普及促進レセプションの話
(9月9日更新)

何時夏だったのか分からないうちに9月ももう大分過ぎた。8月の終わり頃には既に僅かながら紅葉が始まった程だ。もっとも猛暑の夏から劇的に気温が下がるような時こそ紅葉の美しさは最高に達するので、今年の紅葉は果たして如何だろうか。尤も毎年見る幸運に恵まれているから今年は最高だとか、今一つだとか言うが、例えば日本からツーリストで来ればやはり何時の紅葉も美しいだろうと思う。
昨日は2週間ぶりに休んだが、私事ながら雑用が溜まって結構やる事があった。そんな中部下のジェレマイアから電話が有り、本日火曜日46名の予約がi調理場に知らされていなかったと言う。そもそも今日は元々企業会員が19、13、10、7の4団体入っており、うち13名の団体はワーキングランチと言って、日本で言えば松花堂弁当を食べながらの会議と言う感じだが、残る3つのグループはブッフェ。46名の団体は企業会員では無いので、新方針に従えばア・ラ・カルトで対応しなければならない所だが、調理場の人数を十分に確保できない(何しろ同時にブッフェとそのワーキングランチの準備も進めなければならないので)ので交渉してブッフェを召し上がって頂く事にした。この時季に46名のツーリストと言うのも珍しいが、イギリスから来た老人会の様な団体の方々らしい。
レストランはほぼ満席だが、これにバー、ラウンジのオーダーが加わるから今週も頭から結構忙しかった。ジェレマイアは私には電話してきたが、同じく昨日(久しぶりに暇な日でもあったので)休んでいたパディには知らせなかったのかと聞くと、「いや、今日だって来るかどうかも分かりませんし、来てもア・ラ・カルトならオーダー読み上げて配膳するだけだし、ブッフェなら表でお客さんに挨拶しながら、減った物をチェックするくらいで、自分が調理場に入るわけじゃないし、知らせても意味無いと思って・・・」との返事だ。そういうものでもなかろう(苦笑)。そもそもお客様が多い時はそういう役割をやってもらうだけで十分有り難いのだ。しかしパディ自身お昼頃出てきて、「そうか、Nakiに知らせて私には電話しなかったか。それで良し」とか言っている位だからまあそれはそれで良いだろう。
で、例の大使館主催の日本食普及促進レセプション(このタイトルからして物々しい)の件だが、大使館側の要請で抹茶を使ったお菓子を3種類、全部で300人前程出して欲しいとの事。ケベック地区からは鈴木会長御自身や奥さんの宇子さん等が、又モントリオールからは製菓会長のYukiさん(関谷有樹子さん)が応援に来てくれそうなので、出来れば鈴木御夫妻等に一品、Yukiさんに一品お願いして、自分も責任上一品は作って最終的に私が盛り付けるような計画を今のところ立てている。特にYukiさんは普段でも抹茶を使ったお菓子を作っているし、鈴木シェフ御夫妻まで来てくれるのなら私が出なくても良いくらいのものだが、元々は私個人に来た話なのだからそうもいくまい。今週の木曜か金曜には山里一等書記官と関根公邸料理長にLe Moulinにお越し願って細かい打ち合わせをする予定である。モントリオールの和食の方々にも声をかけ、現在何人か参加して下さるようだが、大使館としては和食の方はどうにか人数も足りるので、オブザーバーとして招待し、情報交換などしたいとの事である。


98.Syscoの倉庫見学。
(9月15日更新)
今日はパディ、ロメイン、ツェアと調理場の管理職4人で総合食品会社Syscoの大倉庫に出かけた。管理体制などを見せてもらうと共に今後仕入れるプロダクトについて先方とミーティングを持つ為だ。大倉庫があるのはオンタリオ州ピーターボロと言う所だが、トロントのほんの100キロ足らず手前に過ぎないのだからかなりの距離である。運転してくれるのはSyscoのマネージャーの女性だが、何しろ時間がかかるので朝の6時45分に時間厳守で集合した。パディは「他の皆は朝ゆっくりだけど、Nakiは毎朝7時に出勤しているから平気なんじゃないかな」とか言うが、本来なら休みだと言うのに何時もより15分早く出てくるだけでも結構つらいのだ。大体残りの6日間毎朝又7時出勤(日曜のフジェールは7時出勤でも家から近いので15分くらい楽だが)だし、そもそも本来夜型の人間なのだから。その翌日の月曜日は例の大使館のイベントの日だし、中々寝坊も出来ない。途中工事中の渋滞があったり、パディが例によって腰痛で外に出て休憩したいとか言う事もあって、結局往路は軽く4時間以上もかかってしまった。それにしてもいくら今日は暇だと言ってもシェフだのスーシェフだの管理職4人全員いなくて支障なく店を開けられるのだから、うちの調理場のチームは優秀だと自負している。これでも月曜以外(月曜でも祭日などだと無茶苦茶忙しいのは先日書いた通り)は忙しいので今2名程人手不足なのだが。いや、実際中心となるスタッフはほぼ全員週6日働いているし、私も週6日働くとフジェールと合わせて結局週7日となってしまう事が多い。そろそろフジェールの手伝いも限界かもしれないと思っている。フジェールの調理場スタッフはうちのスタッフ程強力とは言えないのが現状だが、マリオ、クリスチャンと言う2人のスーシェフは有能でこの2人のうちどちらかがいれば後は人数さえ揃っていれば何とかなるのだ。つまり今ならこの2人のどちらかに日曜のシフトもやって貰えば問題ないだろう。言い換えればマリオかクリス(2人ともわりと最近復帰したばかりだから当分心配ないと思うが)のどちらかが又辞めるなんて言い出したら、私は結局辞めるに辞められなくなるのは目に見えているのだから。
話はそれたが、4時間以上かけてようやく到着したSyscoの倉庫は流石に巨大なものだった。冷凍、冷蔵、半冷蔵、常温・・など6段階くらいに分かれた部屋はそれぞれが体育館くらいの広さが有り、また天井がとてつもなく高く上の方の棚は大きなフォークリフトを使わないと品物の上げ下ろしは不可能だ。とにかく温度管理の徹底は目を見張るものがある。そこで私が真っ先に気になったのは停電したらどうなるのか、ジェネレーターはあるのか、あっても倉庫の何パーセントくらいカバーできるのかという点だ。しかし、そういう疑問は来る人が皆持つらしく、こっちが聞かないうちにジェネレーターを見せてくれた。ジェネレーターは予備と合わせて2機あり、どちらか一つだけで倉庫の全てをカバーすると言うから脱帽だ。商品管理もバーコードで管理されているが、これは結構ヒューマンエラーがあるのではないかと個人的には感じた。先月のベーコンの事が頭にある所為かも知れない。いや、あの時は“S社”とか書いておいたが、Sysco社である事はばればれだ(苦笑)。パディは新しいメニューの為、生きた伊勢海老を定期的に仕入れられるか確認して、案内の人を喜ばせていたが、横で私が「ところで、この1ヶ月現行メニューの虹鱒が慢性的に品不足なのは何か理由があるのですか?」と聞くと、途端に嫌な顔をされ、「その問題は解決しました。明日からでも又新鮮な虹鱒が配達できます」と言う。こういう時につい私は余計な質問をしてしまうようだ。まあ魚の手配は主に私の仕事でもあるので止むを得ない。現行メニューでは、これはロメインのアイデアで、Truite arc en ciel(虹鱒)とDoré(スズキ目パーチ科の食用魚、英名PickerelもしくはWalleye pike)と言う紅白の魚2種類の身を合わせてロール状に巻いたものを出しているので、どちらか片方の魚だけ届いても困る事もある。
続いて案内してもらった会議室では本日のアジェンダとしたカラーの書類にLe Moulin WakefieldのロゴマークとChef Paddy Kostiw、Sous chef Naki Soya・・・などまるでレストランのメニューの様な装丁で印刷されたものが机に乗っていて、バックには大型液晶画面にLe Moulin Wakefieldのホームページが映し出されているという演出の細かさだ。尤も我々の名前がRomainを覗いて(彼には特にニックネームは無いので)全部愛称なのは御愛嬌だ。実際にはPaddyはPatrick、NakiはNatsuki、パティシェールのTheaはDorotheaなのだから。もっともそんな正式名称はうちの連中でも知らない人間がいるくらいである。「シェフ パトリックをお願いします」とかかってきた電話に「そんな人はいません」と切ってしまった奴もいるくらいだ(実話)。ファーストネーム、ニックネーム社会の恐ろしさだろうか。
ミーティングに続いては試食会、いろんなものをちょこちょこ味見しては感想を述べながら最終的には食事したのと同じだけのものが胃袋に収まると言うのはあまり楽しくは無い。どれもちゃんと食べればおいしいものだと思うし、高級食材だったりするのだが。結局全工程を終え、会社に戻ったのは7時過ぎだ。その後で明日の準備状況がどれくらい進んでいるか確認した。何しろ明日も50人、8人と言う2組の団体が昼間入っているので結構忙しい。平日の夜は流石に暇になってきたようだ。しかし紅葉は既に始まっているのでそれも長い事は無いだろう。ピーターボロの近くは木の種類も違うのかもしれないがこの辺より紅葉が進んでいる様に見えた。

99.大使公邸レセプションの成果。
(9月25日更新)
さる9月22日月曜日に大使公邸で行なわれたレセプションは成功裏に終わったようで、我がケベック日系料理人協会も又私自身も役目を果たせてほっとしている。
カフェ アンリーブルジェ時代は多少ケータリングとかで他所の厨房にも入ったが最近はあまりにも見慣れた(このレストランの2階に一人で住んでいた事もあるくらいだ)フジェールに週一回行くくらいで後はいつも同じ調理場だからたまには他所の厨房にお邪魔するのも気分転換になって面白かった。特に日本語の飛び交う調理場は新鮮だ。調理補助に来ていた女性は文明博物館で働いているそうだが、残念ながらジョルジュは今晩のレセプションには来なかった。チャーリーとジェニファーもプリンスエドワード島に行く用事があると言うので代わりに総支配人のカトリーナを招待するように頼み、彼女も喜んでいたが、前日になって風邪を引き、皆にうつしたくないので遠慮させていただくとの事。結局来たのはうちのパディとリン・ベルツィオーム オーナー夫人の2人のみ。この2人も呼んで貰ったために会社も協力的で普段のしまり屋ぶりとは裏腹に「どんどん食材とか使って」と言うので遠慮なく材料は殆ど会社のものを使わせてもらった。材料費は大使館で出してくれるという話だが、どうせ限られた予算なら鈴木シェフやYukiさんに廻して貰って不要な所は抑えられればそれに越した事は無い。以前から高名だけは耳にしていた神林シェフ(現職はClub Rivermead総料理長)や、マリオット ホテルの寺田シェフ他、地元オタワの和食シェフ達の知己を得る事が出来たのも大きな収穫だった。
元々日本の農産物をカナダに宣伝するのが主目的で、それぞれの食材に合わせて料理を作って提供。そのうちの「抹茶」をテーマにしたデザートを大使や奥様の御推薦であえてフランス料理の私に話を持ってきていただき、結局ケベック日系料理人協会として参加させていただいた訳である。そう言う事だから全てのデザートは抹茶をテーマにした物ばかり。とりあえず公邸の関根シェフが他所でカステラを提供してくれると言う所があるがどうかと言うのでこれもお願いした。大体一人で幾つも食べる人がいるだろうと思っていたし(事実そうだった)、多ければ多いほど良いと思ったのだ。実際全部ひっくるめて、何とかレセプション終了ぎりぎりまでは持ったかというくらいだった。
鈴木シェフには抹茶風味のチョコレート南瓜と抹茶の羊羹を作ってきていただいた。Yukiさんは急な都合で来られなくなってしまい、鈴木シェフにお菓子だけを預けて持ってきていただくという形になってしまったのは残念だが2種類抹茶クッキー抹茶のロールケーキを提供していただいた。ロールケーキなんていかにもおいしそうで私自身食べたかったが、残念ながら数が足りなくなりそうなので遠慮した。
皆さんに2品ずつお願いした責任上、私も一応2品作ってみた。デザートを作る事自体えらい久しぶりである。私が作ったのは春巻きの皮にアプリコットと抹茶の2種類の風味づけをした白餡をくるんで焼いた物抹茶味のクレム・ブリュレの底に小豆餡を忍ばせた物の2品。春巻きの皮というのもお菓子としてどうかと思われそうだが、試作で使ったパート・フィロ(コーンの混じった薄い葉状のパート)に比べて見た目では劣るが味はこっちの方が良かったのであえてそうした。餡を煮るのだけは流石に結構手間がかかったが、うちのパティシェのツェアや、パティスリーにフランスから研修に来ているジュリェをはじめとするメンバーに日本の伝統のお菓子作りの一端も見せておきたかった意図もある。
クレム・ブリュレの方は餡を底に煙に見立てたキャラメルの糸を上に乗せる事でお茶とお菓子を一体化させたイメージを出したかったのだ。キャラメルの糸なんて、かつては最も得意とするような仕事だったが、久しぶりにやったら、何と急激に冷やす為の準備も忘れて作り始めてしまい、若干温度を上げすぎてコントロールに苦労した。平素から前菜からデザートまで殆ど奥さんと2人で全部作っている鈴木シェフと違い、分業化に胡坐をかいていればこその体たらくだ。たまにはデザートも作らねば。因みに鈴木シェフの奥さんの宇子さんも結局La museを2人で空けられず、こちらも残念ながら来られなかった。
ともあれ、レセプションとしては初めに書いたような成功を収めたのだから良しとしなければなるまい。鈴木シェフは何とあの後車を運転して一気にシャルルボアまで帰って行かれ、翌朝にはもう仕事だと言うから頭の下がる思いだ。
私は翌火曜日には2週間ぶりに休みを貰った。否レセプションの日も休み扱いだが実際にはのんびり過ごす訳にはいかなかったのでちょっと楽をさせてもらった。大抵火曜は忙しいが、この日はそうでもなかったのと、人数が揃っていた所為もある。しかしこの日休みを取ったのは正解だった。水曜から金曜までは20人前後の団体が毎日3〜4件入っており、これに本格化してきた紅葉を見に来るバー、ラウンジなどのお客様が加わるので相当忙しい。だがそれだけでは無く、何と火曜の夜仕事の後でサッカーをやっていてロメインが足を骨折したと言う。幸い全治1週間ほどの単純骨折だそうだが、土曜日にはかなり大きな結婚式も入っている。元々結婚式の料理は当然手伝うつもりではあったが、こうなっては手伝いどころではなく、私がメインの料理を作らざるを得ない。自分の抱えているグループとラウンジも見ながら、時間調整も難しい。大変な週末になりそうだ。サミュエルが「これで僕が何かで休まざるを得なくなったらどうなっちゃいますかね?」とか言い出すと、ブレンダが「そりゃあ、Nakiが毎日24時間体制でやるしかないんじゃない」とか応じる。「あのなあ、私だって何時何が起こるか分かったもんじゃないんだぞ。何なんだ、そのNakiは何時も大丈夫みたいな物言いは」と答えると全員爆笑して「そりゃそうでしたね」と言う。全く人を何だと思っているんだか。おまけに水曜の朝出勤すると、朝食担当のドゥェインが「あ、そのオーブンは点火しないで下さい。今朝私が点火したら中で小爆発が起きて、爆風でドアがバタンと開きましたから」と事も無げに言う。前日鈴木シェフが以前このサイトで私が書いていた事から「その後オーブンはどうなりました?」と聞かれるので、「ああ、すっかり直りましたよ」と笑い飛ばしていたのにこのざまである。慌てて業者に電話したり、余計な仕事が増えた。
何と私が休んだ火曜日には西田大使夫人が御礼を兼ねて食事に来てくださったと言う。まさか翌日に来てくださるとは思いもよらず又失礼してしまった。それにしても皆さん負けそうなヴァイタリティではある。