エッセイ2012年5月


265.久しぶりにフジェールへ。

(5月2日更新)

 5月に入っても未だ上旬は忙しく無い。最多忙月である6月を控え、例年なら既にてんやわんやの時季だ。ライバルがこれだけ増えているのだから、売り方も余程変えていかなければならないと思うし、博物館として他にはない絶対的特色があるのだから方法はその方法は幾らでもあると思う。問題は想像力だろう。
 かりに私がマネージメントに参加していて意見を求められれば当然そういう切り口になるとだろうが、そもそも調理場あたりにアイデアを出させる環境にないのがこの会社だ。現場にいない親会社の方で考えられた硬直した・・・宴会のノウハウの無い人達の意見に沿って動いているのが実情だ。ファーストフード中心のカフェテリアを運営するのと、レストランや宴会を運営するのでは根本的な発想が違う。しかしそのレストラン、宴会は同グループの他店には殆ど存在しないのだからグループの共通基準をここに適用すること自体無理がある。と言って、「ここだけは違うので・・・」などと親会社に向かって発進するような人材はそもそも求められていないし、上が決めた方針通りにやりながら尚且つ順調に利益も上げていくとなると昨今の状況では難しくなってきている訳だ。
 ついに総支配人のルイは更迭され、今の所この地域の総責任者であるブルーノが直接采配をふるっているが、総料理長のジョルジュなど他の幹部ももはや冗談もろくにいわず眉間に皺をよせる毎日だ。
 私は相変わらず予算などの条件が締め付けられてもいかにお客様に影響を及ぼさないで満足していただくかという1点のみに腐心している。

 今日は久しぶりにフジェールに遊びに行った。水曜なので今日こそチャーリーとジェニファーがいる筈だという読みは当たったが、タイミング的にジェニファーが用事があって出かける寸前で良かった。
 フジェールは相変わらずビジネスとして成功しており、近隣のスーパーマーケットには殆どフジェールの製品が並んでいる事は前にも書いた通りで、場所によってはフジェール製品のコーナーにチャーリーの上半身等身大ポスターと解説が書かれている所もあり、そうでなくとも小さな写真と解説は全てのスーパーに出ているので、その事をチャーリーに言うと、「そうか、ついてるなNaki。何処でも俺の顔が見れるとは」と言うと、ジェニファーが「何言ってるの。Nakiはあなたの写真から逃れる方法を一生懸命考えてる最中でしょ」と相変わらず夫婦漫才の様な掛け合いだが、レストラン中心から製品販売中心に移行して行くという10年以上前から聞かされていた計画通りに進んでいるのは流石だ。
 スーシェフのクリスにも久しぶりに会えた。前回食事に来た時にはもう1人のスーシェフ マリオにも会えたが、中心スタッフが長く働き続けているのも居心地が良い証拠なのだろう。
 私もチャーリーとジェニファーに出会ってから26年・・・いやはや長い付き合いになったものだ。

266.ネット社会は長いが・・
(5月31日更新)

 いやはや月初めに更新したきり、とうとう月末になってしまった。もう半年もの間ウエブサイトのキャパシティ残量が2〜3メガバイトと言うとんでもなく少ない状態のまま古い写真などあちこち削れるところは削ってこの僅かな許容量を保たせたまま文章だけ(プラス後ろの壁紙くらい)細々と更新してきている為、ちょっと時間があってもこの削って容量を増やす作業が面倒でついつい滞ってしまうのだ。文章だけならわざわざ自分のサイトを無理に運営しなくてもブログでもやれば良さそうなものだが、リニューアルする意思はあるので騙し騙しやっている。
 今回パソコンの話ばかりで恐縮だがツイッターやフェイスブックはやらないんですか?という質問もよく受ける。最初に立ち上げた英語のサイトから13年もネットにサイトを持ってきたからこそ感じるのだが、フェイスブックでどんどんアイデンティティを公開して行くのは抵抗がある。これだけインターネットに頼って生活していても何処か信用しきれないのかも知れない。このサイトにしても別に匿名でやっている訳ではないが、カナダ、ケベック州とか料理とか何か記載されている内容に興味を持っている人くらいしか検索してこのサイトを訪れる事は無い様で長くやっていても特に問題はなかった。
 ツイッターはどうかと言うと、これもサービス業に携わる人が他人のプライバシーに抵触する様な問題をしばしば起こしているのを見ると二の足を踏んでしまう。ほんの一瞬つぶやいてしまっただけで取り返しのつかない事になりそうだ。長年カナダの首都を中心に活動してきただけに、これでも何人もの国家元首やハリウッドのスター、世界の歌姫、スポーツ選手など世界的有名人に料理を作る機会にも恵まれてきたし、サミットやらNATOの幹部の夕食会なども担当したりした。うっかりネットでつぶやいたら実際とんでもない・・・責任の取り様もない大問題になりそうで恐ろしいのだ。このサイトのお気楽なエッセイでさえ、過去に何度か差し障りがあって削除を求められた事があったくらいだ。
 基本的に新しいもの好きではあるのだが、流石に社会人として何でもかんでも手を出す訳にはいかないと言うところか。