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- 12.ケベック州で5本の指に入るシェフとは?
- (7月20日更新)
- 流石に忙しくて更新できないでいたら7月ももう20日も過ぎてしまった。シーズン中とは言え、大抵のレストランは月曜、火曜くらいは暇なものであるが、このホテルときたら月曜から日曜まで忙しい。いかに人々がジョルジュ ローリエの料理が食べられる店の復活を心待ちにしていたかを物語るものだ。そのジョルジュ ローリエ氏だが先週連絡があってケベック州の年間ベストシェフの最終選考に残ったと言う。勿論初めてのことでも無いだろうし、その事事態今更驚くような事ではないが、いくら店を変わっても料理界から忘れられる事のない本当の実力と言うものには端倪すべからぬものがある。最終選考に残るのは5人と聞くから文字通りケベック州で5本の指に入るシェフと言う事なのだろう。どういう契約になっているのかはよく知らないが、当ホテルに於いては単に料理長に留まらず飲食部門の総括責任者として強力なリーダーシップを発揮している事もあり、今回の雇い主であるホテルのオーナーは辞められたらどうしようとかなり不安に思っているようだ。一度料理を作り始めると別人のように厳しくなるが普段は結構くだけた人でもある。私は先日久しぶりに新しい包丁をe-刃物さんから取り寄せたのだが、その堺 石藤の包丁を借りたシェフは狂喜し、「こんなセクシーな包丁は生まれて初めてだ。バランスが全然違う」とか言い出した。シェフは以前からよく私の包丁を借りていたし、切れ味に関してはどの包丁も変わらない程度には砥いである。第一シェフ自身の包丁も切れないはずも無い訳だが、柄などトータルな手触りが気に入ったようで、「頻繁に借りていい?」とか言い出す始末だ。一方「しかし前から気になっていたが君の包丁は全て左右の刃の角度が違うね。片方が70パーセントで片方が一見平らに見える30パーセントくらいの角度か。わざとそうやって研いでいるのだろうが、どういうメリットがあるの?」と鋭い観察力を見せる。名シェフたるもの料理のいかなる行程に於いて「おお!」とうならせる差を見せ付けなければならないが流石にローリエ氏の包丁裁きは見事だ。私は生まれて初めてアルバイトで調理場に入った25年前など「不器用な奴だな。あぶなっかしいからおまえは当分包丁を持つな」などと怒られたものだったが、25年も経つと「あんたの包丁裁きはまるで機械みたいだな」と言われるようになった。大体包丁の扱いに関してはは日本のレベルはカナダの比ではないと思うが、やはり名人は到る所にいるものだ。石藤の包丁は私自身気に入った。数年前に同じくe-刃物さんから手に入れたグレステンのプロティSという柔軟性にとんだ包丁と共に手放せない包丁の一つになりそうだ。e-刃物さんからはリンクの許可を快諾していただいたので是非一度訪れてみて欲しい。調理器具メーカーからもアドヴァイザーとして声がかかるシェフが頼まれもしないのに絶賛している包丁がリーゾナブルに手に入るサイトである。e-刃物.com
- 13.料理人の誕生日
- (7月31日更新)
- 7月は殆ど更新できなかった。一応7月31日は私の誕生日でもあるので一応更新しておく事にする。前項で述べたように月曜とは言え一切関係なく今日も忙しかった。19の誕生日を長野県のペンションの調理場で迎えて以来、何回の誕生日を調理場で迎えた事だろう。たまたま休みの日に当たった事も覚えているだけで3回くらいはあるが、土、日、祭日など関係ない世界だけに月曜から日曜まで全ての日を定休日として経験している...要するに不安定な世界なので、可能性としては毎年この日がたまたま休みでもあり得る訳だ。しかしレストラン業にとっては何処にいても最も忙しい時期であるだけに特に忙しい思いをした記憶が多い。去年、おととしはガテノー市の花火大会のそれぞれ初日、2日目で500人前の料理を提供する為に大童だった。今年も花火大会自体は行われているが、月曜日にはやらないのでカフェ アンリーブルジェで今年も働いていたとしたら一息つけたかもしれないが、どうも楽できない事になっているらしい。特に月曜、火曜は基本的に調理場を預かっている立場だけに責任も重く、個人的な記念日は一切入り込む隙が無い。そう言えばパティシェだった時に自分の誕生日に人の誕生日ケーキを10個も作ったりした。最もレストランだからその程度だがケーキ屋さんなんかだったら100個も200個も人の誕生日ケーキを作ったりするのかもしれない。しかしそれだったらどさくさに紛れて自分のケーキも作れるかも...それはそれで空しそうだが。今回は完全に個人的な話で恐縮だが、それこそ誕生日の記念にご勘弁願いたい。
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Harb
徒然なるままに
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