エッセイ2008年3月


70.春未だ来たらず。
(3月1日更新)
昨日ようやくパディが退院したそうだ。まだしばらく毎日通院生活が続くようだが、とりあえず自宅に戻れただけでも良かった。この分なら私の帰国前に帰ってこれるかもしれない。何しろ私は正月頃から彼の顔も見ていないのだ。
今月は月末と週末も重なり、今日は結婚式も入って調理場もごたごたしているので棚卸しは来週の水曜日まで延期してもらった。2月は短いとは言えあっという間に3月だ。もっとも天気は未だ未だ冬、雪もマイナス30度近い気温も続いている。
ドゥェインの給料は人事部長との三者面談でなるべく功績を強調して実際には時給だが年棒に換算すれば約20万円程度上がるようにしてあげることが出来てまずは良かった。一方マーク・アンドレはその後も大幅な遅刻が続いていて反省が見られない。こうなると処分も真剣に考えざるを得ない。現実的には週末のアルバイトに降格と言う所だろうか。皿洗いをしていた頃の彼は非常に真面目で、どんどん調理場の仕事も手伝い、誰もが彼は皿洗いにしていては勿体無いと認めて昇格したものだったが。ただ未だティーンエイジャーの彼にこのままで通用すると甘い考えを持たせてしまうのは本人の為にならないので、もう少し様子を見て決める必要がありそうだ。私としても自分の休暇前でもあるのでいろいろ難しいのだが、全く帰ってきても問題は山積みの様だ。せめて今回は大きなサプライズが待っていない事を祈りたい。
明日はフジェールの日。休みが無いとは言え、フジェールに行く日曜日は気分的に楽だ。マネージメントとは無縁にただ料理を作ることだけに集中していればいいし、フジェールのサーヴィス陣は優秀だから作った後は全て彼等、彼女等に委ねれば良いだけだ。フジェールは毎年3月週末だけ(金、土、日)の営業となるのでジンも休暇を取って中国に帰ったようだが、平日休む分マリオが日曜日終日働いて私のシフトをカバーしてくれるので問題ない。日曜日に出発して日曜日に帰って来るので2週間とは言えフジェールは3回休む事になるので、ル・ムーランの一番暇な時期と合わせて3月が私にとって最良の休暇タイミングと言う事で計画してきた訳だから当然なのだが、パディの病気は流石に計算外だった。それでもかなりいいタイミングに回復して来てくれたのは有難い。何よりパディ本人がいい加減退屈している様だから大分元気になった証拠だ。
71.休暇は近いが。
(3月5日更新)
3月になってもしかし冬の厳しさは増すばかりだ。おとといの月曜日は例のアイス・ストーム。ハイウエイに乗っても他の車は走っていない。対向の上り路線はオタワ、ガテノー方面に向けて出勤する車が渋滞を作るような時間だが、一時間か二時間もすれば少し収まるようだったし、多少時間をずらして出勤するのだろう。だいたい6時台なのだから本来の出勤時間よりは早いのだろうし。しかしこっちはそうは行かない。何しろ泊まっているグループもあるのだ。何処にも行きようがなく、暖かいスープを待っている。
しかし路面の状態は最悪。ついに途中で滑り始めた。スタッドレスタイヤだろうが、何だろうが雪と違い氷結路で滑らないタイヤは無い。コントロールを失いグリップが回復しない。大抵は足で操作するものに触れずハンドルを調整していればエンジンブレーキが利いてきてグリップを回復するのだが、エンジンブレーキがそもそもかからない。それもその筈、スケートリンクの上を車で走るような状態だ。こんな事は流石に初めてだが、もうこうなっては何処かに軽く当てて強引に停めるしかない。理想的には坂のような所に乗り上げたい所だがそんな物が都合よくハイウエイの上にある訳も無く、脇に積もっている雪の塊に右端を軽く引っ掛けるように当てて予定通り止まった。外に出てみたら殆ど外見上のダメージも見当たらなく、ホテルに到着してから仔細に見ると右下のフォグランプがかけているだけなので安心していたが、仕事が終わった後近所の修理屋に点検してもらったら、実は相当なダメージを受けていた。外見上無事なのはバンパーが衝撃を吸収した為で確かにボンネットを開けて見るとバンパーが押されて下に少し下がっているのが分かる。更によく近くで見てみると車体もバンパーに押されて僅かに湾曲している。このままにしておくと、曲がった所から塗装が落ちて錆びていくと言う。前の車で鹿を撥ねた経験から車両保険にも入っているが、保険を使えばバンパーから何から全部新品の部品に取り替えて直す事になるので、見積もり消費税別で約3800ドル(約38万円)になるが、中古部品で直せば20万円プラス消費税程度で済むからそうした方が良いだろうと言う。この工場はスバルの特約店(そもそもここで車を買った)だから、この試算は新品部品の場合でも中古部品の場合でも誤差はせいぜい1万円前後だそうだ。またその関係でスバルの中古部品は簡単に手に入るし、そもそもフォレスターは特に普及車だから尚更だ。色は違うことが多いが、塗装も全部含めてこの値段でやると言うので結局この方法を取る事にした。消費税だって州税と国税と両方だから20万円でも税込みで25万円近くにはなる。部品は中古で12万円くらいだが、作業に3日はかかるので工賃でこの位の金額になる訳だ。しかし保険を使えば次回から保険料が50万円くらいにはねあげらるだろう。車両保険まで入っていると今だって保険料は安くは無いのだが、しかしつくづく保険と言うのは実際には使えないように出来ていると感じる。50万円にもなる保険料を何年にも渡って払う事を考えればもっとひどいダメージを受けた時でも結局別な車にでも変えた方が安上がりなくらいだろう。何れにせよ日本から戻ってきたら大きな請求書が待っている訳だ。
アイスストームは一日で終わったが、その翌日、翌々日、つまり昨日も今日も吹雪だ。雪ならスタッドレスタイヤ+4WDでまず滑る事はないが、もういい加減この厳しい冬に田舎道を毎日走るのはうんざりだ。アイスストームの日は流石に従業員駐車場までの坂道はタイヤが空転して登れなかった。
昨日の午後は一度天気が回復し太陽が顔を出した。この時を活かしてパディがリハビリの散歩を兼ねて調理場に寄った。私が彼に会うのは2ヶ月ぶりだ。すっかり瘠せて別人の様だが、大分元気にはなって来たようだ。この分なら私の留守中少しずつ事務の仕事は出来そうだ。本格復帰は3月終わり頃になりそうだそうだが。
昨日、今日は団体が3つずつ入っていたのでブッフェをやったが、前回書いたように棚卸しを今日に回してもらっていたのだった。しかしロメインが「今回のインベントリーは俺がやりますよ。うちに持って帰って自宅のパソコンで仕上げます。明日の経営会議ももうなれて来たし俺が出ます。その代わりNakiが帰ってきたら3日くらい休ませてくださいよ」と言うので、お言葉に甘えて任せることにした。
マーク・アンドレも私の本気が伝わるのかあれから真面目に遅れないで来ている。しかし昨日は夜まで働いて今日は朝から出勤なので(9時出勤だから早くは無いのだが)とにかく早起きの苦手な本人が心配していたので、冗談で「Spaのベッドが空いているから泊まってもいいんだぞ」と言ったら「はい、そうします」と言って、本当にSpaに泊まってちゃんと出勤してきた。この吹雪だからそれで結果良かったのだ。何しろ彼はウエイクフィールドに住んでいるのだが、愛車は何とシャコタン(今時こんな言葉使っているかどうか知らないが車高が極端に低い車である)。タイヤもウインタータイヤどころか、オールシーズンですらないのだ。周りは皆4WDのRV車だらけの中で強烈に浮きまくっている。夏に楽しむ為に選んだ車だろうが、当然のように今年に入って2度も事故を起こしている。その借金もあるだろうし、首になっては大変という所だろう。本来見込みのある子だからこのまま頑張ってくれれば言う事は無いのだが。
昨日、今日の団体状況は前からはっきりしていたが、明日は小さなグループが1つしか入っていないのは分かっているものの、あさっての金曜日に関しては3つのグループのうち1つしか確認が取れていない状態だったので中々予定が立たなかった。3つのうち1つ・・・何しろ、バンケット・マネージャーは休暇中(3月が私にとって一番暇と言う事は彼女にとっても一番暇と言う事なので)。因みにオーナー夫妻も先週半ばから休暇中。バンケットについてはオーナー不在中総支配人代理を務めるステファンが確認を取る事になっているがそのステファンも昨日は風邪で休み(総料理長は病気だし、大丈夫かこのホテル!)。ようやく今日確認が取れ、結局3つとも入ったので急いで金曜日のブッフェを手配をした。雪が降るのは当たり前のカナダ東部の事で、滅多に飛行機が欠航になどならないのだが、吹雪とあっては流石に欠航。今日チェックアウトする筈だった団体も動きが取れなくなって、調整が必要になったりもした。
全く休暇直前まで一切気が抜けない状態だ。否帰ってきたら帰って来たでやる事が一杯ある。True World Foodさんもクレジットチェックは終わっているし、こっちに戻ったら注文をしてみようかなとか色々メニューも含め検討している事もある。しかし他の業者さんは新しくクレジットチェックが終わって契約するとしつこく価格表をFaxで送ってきたり、電話を架けてきたり、お勧めをメールで送ってきたりするが、True World Foodさんはこれが日本流なのか、その後何の催促も無い。あまりしつこいといい加減否になってくるのでそれはそれで良いのだが。
72.ホワイトアウト、飛ぶのか飛行機?
(3月8日更新)
ようやく明日から休暇という所まで漕ぎ着けたが、今日はまた大吹雪。またぞろ30数年ぶりの記録だとかいう話だが、この冬は何度この手のコメントを聞いたことか。こんな天候だというのにお客様は結構いた。特に12人のグループは昨日急遽全員が配偶者同伴に変更になった(つまり24人)し、スキーのお客様も随分軽食に寄られた。しかし吹雪はどんどんきつくなって私が帰宅する頃にはル・ムーランの近所にあるエーデルワイス スキー場辺りはともかくクロスカントリーなどは遭難の危険がある様な状態だった。帰り道にはついにホワイトアウト。日本の映画のタイトルにもなったが、夜停電で真っ暗になるのがブラックアウトだから、白い闇とでも表現すべきか。一寸先が闇という代わりに一寸先が白と言う感じで霧とは違うが辺り一面真っ白になる現象である。基本は雪だが、時々氷雨に変わり慎重な運転を余儀なくされた。それでなくとも明日からの休暇を前に今夜車を工場に預け、帰ってきたら大きな請求書が待っているのだから。因みに明日はDay light savingの始まる日。日本ではサマータイムと呼ばれるが、この吹雪の中サマータイムと呼ぶのはちょっと無理がある。
何はともあれ、休み前の仕事の手配は全て済ませた。私の出発前と言う事でまたパディが寄ってくれたが、数日前会った時より格段に元気になっていて安心した。やはり病院に居るのと自宅に居るのでは回復度が違うのだろう。
このエッセイを書く前にエアカナダのホームページでオンラインでチェックインもした。カナダでは今やチェックインはオンラインが常識と言う時代。家電の様にパソコンが各家庭にあるのが当たり前と言うことなのか。
更にオンライン チェックインに先立ってメールをチェックしたらリトル・インの重田まり子さんから、「行ってらっしゃい」というタイトルのメールが届いていた。出発の日まで覚えていてくれたらしい。フロントと言う仕事上まめな方なのだろうが、家族以外にこのエッセイを毎回熱心に見てくれている人がいると思うと嬉しい。
それにしても吹雪未だ止まずだ。明朝ぐらいまで持ち越しそうだが、飛行機は無事飛ぶのだろうか?今オンラインでチェックインした所では「定刻通り」となってはいるのだが。
73.休暇その後。
(3月25日更新)
前回休暇前最後の更新では飛行機が無事飛ぶのかと言う所で終わった。その結果から報告しておこう。やはりあの日3月9日は未だ吹雪が収まりきっていない状態だった。車は昨日の仕事が終わった後修理工場に置いてきたのでタクシー会社に電話したが、どこも「チェルシーになどとても行けない」との返事。最も近いハルのタクシー会社は「行けるとしても最低3時間待ち」と言うのでは話にならない。実は今回オタワ空港からではなく、モントリオール空港から飛び立つ事になっていたので(何れにせよトロント発のエアカナダ001便に乗り換えるのは同じだが)、とりあえず列車でモントリオールに行かなければならない。時間の余裕は十分見ていたが、流石に3時間以上なんて待ってはいられない。当初の予定では自分の車で駅まで行き、長期駐車するつもりであったが、肝心の車は修理工場にある。先週もジェニファーが「長期駐車なんかもったいないし、送っていく」と言ってくれていたのを思い出し、電話してみると、二つ返事で引き受けてくれたものの、10分程経って「どうにも車を掘り起こせないわ。家の前の除雪車も当分来てくれないらしいし・・・」と言ってきた。さもありなん。彼女達の家は公道から相当入り組んだ所に有り、冬季は4WDのRVかジープで無ければ行けない難所だ。仕方が無いのでアパートの隣の部屋のマットを起こして頼み込んだ。ただの隣人ならこんな時にこんな事は頼み辛いが、マットは私がフジェールでシェフ・ド・パティシェをしていた時の部下で、全くの素人から1人前になるまで面倒を見た経緯がある。料理学校の試験の前日など深夜までレストランに残ってアドヴァイスしたこともある。だったら最初から彼に頼めば良さそうなものだが、この世界の人間に多い宵っ張りの朝寝坊だという事もあるし、最大の理由は彼の車がウインタータイヤこそ履いているが普通のクーペである為だ。予想通り半分眠っていたが事情を話すと快く引き受けてくれた。2人で彼の車を掘り出し、駅へは余裕で到着した。更に列車の出発は定刻通り。ここまでは順調だったが列車が出発してまもなく回りの風景はまたもやホワイトアウト。右の窓も左の窓も真っ白と言う異様な光景だった。スピードは60キロ、40キロ、20キロと落ちて行き、とうとう立ち往生して周りにまとわりついた雪を落としたりしていたが、視界は最悪。暫くして再び走り出すと、遅れを取り戻そうと今度は急にスピードを上げて何と最高160キロまで達し(GPSを持っていたのでスピードが計測できた)た。それはそれで恐ろしく雪を蹴散らすズシャ、ズシャと言う音を発しながら真っ白な中を走っていく。しかし当然ながら長く続かずまた歩くような速度まで落ち、結局2時間も遅れてモントリオールに到着。そのままシャトルバスで空港に到着したが、空港は大混雑。皆オンラインでチェックインしている筈だが荷物を預けるカウンター(旧チェックインカウンター)は長蛇の列。皆欠航続きでフライト変更の手続きををしていたのだ。昨日の晩から空港内で寝ていた人も大勢いた。どう転んでもその日のうちに立てる状態ではなかった。結局3時間も並んで翌日の同じ時間のフライトに変更してもらい、空港の近くのホテルを取った。翌日は嘘のような晴天。気温は低いがフライトは快適だった。仕事柄同じケベック州内のホテルに泊まったのも勉強にはなった。1日遅れとは言え、無事日本に到着した。
休暇中は特に何処かへ出かけるでもなく、家の周りにいたので特筆する事もないが、ここまで書いただけでぐったりと言う感じなので、何れにしても続きは改めてと言う事にさせていただく。
74.休暇その後(その2)
(3月31日更新)
前回の更新の翌日くらいには続きを書くつもりではあったが、帰ってきたら流石に忙しく気がつけば3月も最終日になってしまった。
今回の休暇は特に他所へ旅行するでもなく、両親宅でのんびり過ごした。毎回パターンとして河童橋の道具街に1日行き、別の日には本好きな父と一緒に神保町の古書街に行って、料理本に強い事で知られる悠久堂書店で本を探すと言うのを何年も続けてきたが、いい加減道具も足りないものも無いので今回は河童橋には行かなかった。悠久堂でもかつては20冊も買って行く事があったが今回は僅かに2冊、別の店で値段的に掘り出し物の古い料理誌を1冊買ったに過ぎなかった。欲しい本が判っていれば今は(うまくいけば古本でも)Amazon.com辺りであっという間に送ってきてくれる時代だ。ただしロメインに「ミシュラン東京を買ってきてくださいよ。調理場に常備して置きましょう」と頼まれていたので、これは探してみた。いかにも彼らしい頼みだったし、神田神保町は何も古本ばかりでなく、大手の一般書店も軒を連ねているので、三省堂、書泉グランデ、東京堂など主だった所は全て当たってみたが全滅の売り切れ。聞く所によるともう新たに増刷もしていないらしい。来年を待つしか無いという事だろう。星を取った店のリストは興味があったので当時インターネットからダウンロードしてみたが、本書自体は日本に住んでいる訳では無いのだから私は特に読みたいとは思っていなかったのだがフランス出身のロメインにしてみれば、異常に沢山の星を取った外国の一都市の事が気になるのだろう。
ミシュランは関係ないが、本来ならいろいろと東京のフランス料理店も食べ歩きしてみたいところだが、何しろ物価が高い(苦笑)。2年前に帰った時に目黒区の学芸大学駅に近い花澤龍シェフの「ボンシュマン」に行った時は感動した。私は中学校以来今に至るまで身体的理由で学校や仕事を休んだ事が一度も無いと言うくらい丈夫だが、実はボンシュマンを訪れた時3日間まるで食欲がわかないという生まれてはじめての異常事態に襲われていた。その時も食欲以外は普通に元気でただ単に何も食べたくないという不思議な状態。新種のインフルエンザか何かの影響だったと思うのだが、よりにもよってせっかく予約した日がその3日間の最後の日の昼間。全く食欲がわかないが、残す訳にはいかないので前菜もやっとという感じで食べたのに、メインコースの本日の魚であった鮟鱇が調理といい、爽やかなソースといい、素晴らしくスーッと食べさせらてしまった。その日の夜にはまた食欲の無い状態に戻ったのだが、翌朝カナダに戻ると言う日には完全に食欲が正常に戻っていたのもあの鮟鱇のお陰だったという気がするほど見事な物だった。サーヴィスも素晴らしく、勉強になる事の多いレストランであった。
今回は家族で寿司を食べに行ったり、母と一緒に日本橋の親戚筋である「宇田川」へ夜食事に行ったくらいで、特に食べ歩きはしなかった。出発が1日遅れたので滞在が12日間しか無かった事もある。私には親戚と言えるのは両親と姉以外に殆ど無く、宇田川の叔母とも祖父同士が兄弟、つまり母の従姉妹という遠い間柄だが多少なりとも付き合いがある親戚はこの人くらいなのだ。もっとも祖父同士は良く似ていたし、母も宇田川の叔母も父親似なので、顔立ちが母に似ていて確かに叔母という印象はある。宇田川はお持ち帰りのトンカツ サンドイッチが有名で料理雑誌とかにも何度か紹介されている(ちょっと宣伝まで)。
そんなこんなであっという間に短い休暇は終わった。帰ってきても今回は大きなサプライズは待っていなかった(それが普通ではあるが)。パディは私がいない間は何度か出てきてロメインに指示を与えたりはしていたようだが、ここ数日で又腰痛が悪化したようで、3日ほど前に顔だけ見せに来たが、6時間以上立っている事が出来ず、医者は「何もするな」と言っているらしい。何もするなと言ったって、具体的に何はして大丈夫、何は駄目と言う事を示してもらわなければ意味が無いので、それについては今週の前半には医者からの回答を得られるはずらしい。ストレスは溜まっていそうだったが、体重はすっかり戻ったようだし、本人は結構元気そうだったので、もうそろそろ事務の仕事くらいは完全復帰できるのではないか。もっとも今月の棚卸しは明日だしロメインは明日は休みなのでまた数字と格闘になりそうだ。約束どおりロメインには先週私が帰ってきてから4日間、連休ではないが休みを取らせてあげるようにしたので、帰ってきてからのこの1週間は尚更忙しかったのだ。帰ってきた初日にとりあえずスープでも作るかとスープを作ったら、ドゥェインが「ああ、このスープだ。Nakiよく帰ってきてくれました」とか言うので「何言っているんだ。ロメインやサミュエルのスープだってうまいだろう」と言うと、「うーん、そうですねえ。よく帰ってきてくれましたとしか・・・」何じゃそりゃと思っていたら、暫くしてパートタイムのクリスティが来て「やっぱりNakiのスープですね。これを待っていました」とか言い出すので「何だよ何だよお前等、ロメインのスープの何処がいけないんだ?」と聞くと、「いや、何処も悪くは無いんですが、Nakiのスープじゃないという事ですね」とまた分かった様な分からないような事を言う。まあ全く分からないでは無い。ロメインは才能もセンスも抜群だが、若いシェフなら誰でもそうであるようにオリジナリティにこだわりすぎて奇をてらいすぎる傾向がある。スープで言えば色々な材料を掛け合わせて新しい物をを作ろうとするために基になった野菜の味などが見えてこなかったりするのだ。しかしこれは私を含め、誰でも一度は通る道だと思う。
こんな訳で明日からも忙しいので、今月最後の更新はここまでと言う事にしておこう。